輸出代行広がる 宅急便感覚、農家も利用 ヤマト運輸 ニューストピックス 運送会社大手のヤマト運輸が手掛ける、香港への農産物の輸出代行サービスの利用が広がっている。国際宅急便と現地向けインターネット通販を組み合わせたサービスで、外国語による通関、検疫などの手続きから販売までを同社が代行する。小規模な農家でも「宅急便を送る感覚」で輸出できるのが売りで、昨年秋の開始以来、全国の生産者が農水産物200種以上を出品した。JAによる出品もあり、今後も利用者が拡大する見込みだ。 「日本産地直接配送」「OTORIYOSE(お取り寄せ)」――。高級感ある雰囲気で日本の産品をPRするのは、同サービスが売り場とするインターネットサイト「ヤフー香港」内の「超市」。現地でトップレベルの閲覧数を誇る通販サイトで、サイト内の農産物販売コーナーから注文を受け付けて輸出する仕組みだ。 ページの開設や商品紹介などは、同社の系列会社が1商品につき8000円で代行。手数料などを含めて初期費用が1万円程度で輸出を始められる。 出品者が設定する販売価格に、国際宅急便の送料を上乗せした価格をページに掲載する。消費者からの注文は、ヤマト運輸を通じて生産者に通知。毎週水曜に集荷し、早ければ翌日の木曜に香港に届く。集荷から2、3日以内で香港の注文者に届くため、鮮度を維持した輸出ができる。クール便もあり、冷凍品の発送も可能だ。 同社によると売れ筋は果実で、リンゴや桃の人気が高い。リンゴ「ふじ」700箱を輸出した長野市の農家、高橋千明さん(82)は、3キロ箱に4L級6~8玉を詰めて出荷。現地では赤を縁起が良いとする風習があるため、真っ赤な果実を厳選した。「今年は中間層向けの中玉リンゴも売って販売を伸ばしたい」と意気込む。 JAによる利用も始まっている。和歌山県のJA紀の里は昨年から、特産のブランド桃「あら川の桃」を出品。これまでに950ケース(1ケース2キロ)を販売した。JAは台湾にも桃を輸出しているが検疫などの手間が多く、同サービスの便利さを実感する。JAは「出荷数は少ないが海外販売への足がかりになる」と期待している。 ヤマト運輸の担当者は「このサービスがきっかけで、現地のデパートと取り引きが始まった農業法人もある」と説明する。 同社は現在、台湾やシンガポールなど5カ国・地域で運送事業を展開しており、今後は香港以外での輸出サービスを検討する方針だ。 PR