集まれ若手!新免許導入へ業界期待 懸念の声も ニューストピックス 政府がトラックの新たな免許制度導入の検討を進めている。来年の通常国会に道交法の改正案を提出し、18歳で運転できる範囲を総重量5トン未満から7.5トン未満に広げる方針だ。運送業界は若いドライバーが不足しており、高校の新卒者などが運送業界に入りやすくするのが狙い。業界は「人材確保につながる」と期待を寄せるが、規制緩和が事故増加につながらないような仕組み作りも課題になる。【鈴木一生】 「ドライバーを募集しても、20歳前後の若者が来ることはほとんどない」。福岡県内の中規模トラック会社の社長はため息交じりに話す。保有するトラックは約60台で、ドライバーは70人前後。募集は40代までとしてきたが、人数が集まらず昨年から50代までに広げた。「若年層不足で高齢化が進み不安を覚える」と言う。 現行の運転免許制度は総重量別に、普通(5トン未満)▽中型(5トン以上11トン未満)▽大型(11トン以上)--の3区分。以前は普通免許で8トン未満まで運転できたが、普通免許のドライバーによるトラック事故が多発したため、政府は2007年、普通と大型の間に中型免許を設け、取得条件を20歳以上で運転経験2年以上とした。 一方で、中型免許制度導入は若年ドライバー不足の一因となった。高校の新卒者が普通免許を取って運送会社に就職しても、中型免許を取得するまで最短2年は5トン以上のトラックを運転できない。コンビニエンスストアの配送などに使われる小型トラックは近年、保冷装置やパワーリフトを装備し、総重量が5トンを超えることが多くなり、業者側も即戦力にならない若者の採用を見送らざるを得なくなったという。 全日本トラック協会によると、運送業の就業者構成比で10~20代は03年に18.5%だったが、13年は10.1%に下がっている。 そこで政府が検討しているのは、普通免許と中型免許の間に3.5トン以上7.5トン未満の新たな免許を設けることだ。普通免許取得後の年数は問わず、18歳から取れるようにする。 ただ、トラックは重くなるほど事故が増え、死亡事故の危険も高まる傾向にあり、中型免許導入も事故防止が目的だった。免許制度見直しと共に安全対策強化も求められる。 制度見直しについての警察庁の有識者検討会では、交通事故遺族がヒアリングで「若年層ほど事故率が高くなる」と事故増加の懸念を訴えた。委員からは「安全水準を崩すことは許されない」として「例えば中型免許の20歳までに2年間、初心者としての期間を設けて、一定のスキルが養えた場合に中型を取得できるといった継続的な教育にしていった方が、規制緩和と共に安全性を高めることができる」といった提案が出た。政府は、新区分の免許を取得する際には実際にトラックを使った試験や教習を課すことなども検討している。 福岡県トラック協会の川崎和文専務理事は「新たな免許制度が、若者がトラック運送業界に戻るきっかけになれば」と期待する。その上で「新たに業界に入ってくる若い人たちに運転技術や安全意識の向上を図る研修を設けるなど、業界としても支援態勢を整えていきたい」と話している。 PR